警報級の天気予報-前編-【心臓内科医の脳トレ雑学:連載002】

2025/11/2 22:26
自然
警報級の天気予報-前編-【心臓内科医の脳トレ雑学:連載002】

ゲリラ豪雨という造語の起源は、諸説粉々としていて定かでないが、体止め(文尾を名詞とする)を愛用する新聞記事が最初らしい。

 

今世紀の初頭(2008年)、現代用語の基礎知識選「新語・流行語大賞」を受賞してからというもの、ゲリラ豪雨という体言が広く一般的に使用されるようになった。気象用語では、局地的大雨だが、いつでも、どこからでも、相手の不意を衝くゲリラ戦法をもじった表現が、国民感覚にマッチしていたからである。

 

今頃、「青天の霹靂」という故事は驚くに値しない。地球温暖化が世界の気候変動に暗い影を落とし、豪雨、雷、雹、竜巻などといった有為転変に翻弄されっ放しだからだ。世界を席巻する韓流ドラマの見どころの一つ、「仲の良いカップルの表情が凍りついた次の瞬間、怒り狂って、いきなりきれるシーン」を彷彿とさせる。

 

気象庁に所属する予報官の苦労は推して知るべしだ。予報を出すからには、それなりの根拠や意地がある。高額なコンピューターや人件費はすべて国税で払うのだから、「明日の天気は予測不能」とは、口が裂けても言えまい。

 

15年ほど前、お隣の韓国新聞に「天気中継庁となってしまった気象庁」という社説が掲載された。週末予報が、4週連続で外れたため、気象庁は天気を予報するのでなく中継すべきとする意見だ。年間を通じて、誤報が重なり、市民は怒り心頭に達して、気象庁を糾弾した。いかにも隣国らしい。インチキ天気予報と罵られたのである。

 

一方、我が国の天気予報も「似たり寄ったり」で、線状降水帯や警報級豪雪の予報は外れに外れる。ライブ放送は、猛烈な台風の上陸時くらいで、強風や集中豪雨を必死に耐え、立っているのがやっとの危険極まりない状況は、誰もが固唾を飲んで見守るが、いかに職務とはいえ、聖域を超えたパワハラなのかとも思え、はらはら感を満載する。個人が撮影した動画を遠慮なく放映するし、上空のヘリから、遅まきながらと、台風一過の皮肉な映像を見かける。

 

お天気なんて、筋書きのないドラマみたいなものなのか。

「お天気姉さん」たちは、まったくノーテンキに、予報が外れても、決して反省を口にしない。判で押したような決まり文句を、しかも平仮名原稿なのに、目をキョロキョロする。どうせなら、手元において読んだらどうでしょう。

 

視聴者の予定が狂おうと、どうなろうと知ったこっちゃない、たまたま外れただけ、運が悪かった、どうにかなるさと、明るく前向きで、結果に拘らない。さすがは4Kテレビ放送を意識して、ヘアスタイルやコーディネートを決めるが、自前という訳にはいかないので、コスチュームの専門店からレンタルされる。

 

やむを得なかったのか、選択ミスか別として、「今日は今年の最高気温、雨が降るかも、折りたたみ傘を・・・」というが、厚手の純毛コートを着ていては、どうにも臨場感に欠ける。まあいいさ、みんな、フリーアナ候補だ。

女子アナが持て囃された時代はとうに終焉したのだ。カトパンが最後か。

所詮、天気予報は割に合わない仕事で、貧乏くじを引かされたのだが、響報級の予報が当たれば、メチャラッキーと歓喜の声を上げるし、気楽な稼業ときたもんだ。

 

一昔前の早朝、無数のスズメが電線に並んで大合唱しており、あまりにもうるさくて目が覚めた。当日の天気予報は無風快晴で、山肌のきれいな山間のゴルフコースへ向かった。午前中のプレイは順調で、パー5も2オンするほどであった。

 

天災は忘れた頃に、否、忘れなくてもやってくる。山頂に近い休憩所で、昼食あたりから頬に冷たい不気味な風が吹き始めた。11番ホールのティーエリアに立つと、いきなり土砂降りになった。それも、バケツをひっくり返したようにもまた地面を突き刺すと思えるほどにも勢いのある集中豪雨だった。

 

今日はこのホールまでだなと諦めて、カートにレインカバーをかけるのだが、レインウエアを着る余裕がないから、みるみるうちにずぶぬれになってしまった。レインカバーは横殴りの雨を凌げない。とても雨宿りとは言い難い状況のなか、さらにカート道路の側溝から、雨水が容赦なく溢れ出し、このまま降り続くとすると、急な坂道、ぬかるみや砂地を無事通過できるだろうか、ゴルフどころでなく、「命有っての物種」と、身の危険を案じるほどであった。

 

しかし、ことはこれで終わらなかった。まさに、踏んだり蹴ったりの1日だ。真っ黒な暗雲が立ち込めたかと思うと、積乱雲の中に凄まじい上昇気流が起きたのだろう、大きな氷の粒が雨になれないまま、落雷とともに巨大な雹(ひょう)に豹変(同音異義語のダジャレ)して落ちてくる。カートの屋根を突き破るかのように、男鹿のなまはげ太鼓にも似た衝撃音が鳴り響く。呆然とするほかなく、「どんなに激しい嵐もいつかは止む」と観念していた矢先である。

 

豪雨も雹も、いきなり引き上げたのである。まるで、なに事もなかったかのようだ。それにしても、雨が上がった途端、今度は、ひとつない真っ青な空となってカンカン照りだ。直射日光が眩しく、まるで、イソップ童話「太陽と風」に登場する旅人を地で行った気がして、レインウエアも防寒着も脱いでしまった。

 

今、日々地球温暖化が進行し、北極の氷河も、南極のトッテン氷山も次々に溶けて海のもくずとなり、氷山の一角はえ去ろうとしている。海水の温度と水素イオン濃度が加速度的に上昇して、海洋の酸性化が進み、そこに生息する野生動物や海洋生物などの生態系は破壊され、ゆくゆくは「不毛の地」となる懸念が囁かれている。

 

ある日、東京行きの便に乗るため、空港に向かった時の会話である。タクシーの運ちゃんに問うてみた。

私「空港へ送迎するとき、テレビの天気予報を見てますか?」

運転手さん「あてにならないので、見ていません」

私「じゃあ、どうしているんですか」

運転手さん「スマホのアプリを検索して、自分で判断します。若い人たちは皆、ネットを利用していますね。年配のお方も、最近のテレビ予報は見ないって云いますね」

バックミラーで私を年配者とみている。それが悔しい。今の長寿命化社会においては後期高齢者をそう呼んでいただいたい。まだ1年以上先のことだ。

 

私「テレビの天気予報は、なぜ見ないんでかね」

運転手さん「外れるからだそうです」

買い物や洗濯、雪降ろしや食品管理の判断のほかにも、梅やダイコンを干すか、車か電車の通院か、どっちみち、めどが立たないと嘆く人が多いと言っていた。

 

イソップ寓話「狼が来た」をコピー&ペーストしないでほしい。羊飼いが嘘を何回も重ねるところは、積もった雪を見るやいなや、すぐにも警報級と誇張してやまない姿勢とダブって見える。本当に冬の嵐が襲って来たときは誰にも信じてもらえない。『だってしょうがないじゃない(1988年の新曲)』では済まないのだ。

今頃、若者とは、法令基準の34歳でなく、不妊治療が保険適応となる43歳頃までとしたい。この世代は、ユーチューブを溺愛し、テレビ放送と離別した。昔風に申せば、見たい活動写真、聞きたい歌曲、知りたい号外などがすぐに検索できるからである。閲読するだけでなく朗読の傾聴ファンもいるオンライン書籍の利用率が日増しに高まっている。

 

TV版の天気予報は、見る影もないほどの落ぶりである。だが、テレビ業界も指を咥えて黙っていない。某公共放送が、天気予報の改善策を番組で取り上げたし、BSフジのウエザーニュースは、視聴者も、ネット閲覧者も多く、評判がすこぶる良い。私は早起きした時に見るが、お天気キャスターの視線や話しぶりは、ライブニュースに近いものを感じる。アプリの登録者から送信されたウエザーレポートと、全国各地に設置したライブカメラの映像から、ポツンと一軒家はともかく、市街地における天候状況の最新版を放映する。天気予報の精度も90%を凌駕しているし、スマホのアプリも利用できるから便利なことこの上ない。

 

ただ残念なことに、某公共放送の予算審議をみていて、24時間、365日稼働するインフラ企業(電気・ガス・水道会社など)、都庁、病院などには、日勤、夜勤の交代制があるというのに、世界中に張りめぐらされた取材網とネットワークを通じて情報伝達を行うメディアの夜間体制は未だ盤えられていない。北朝鮮のミサイルや中国軍機が飛び交うなか、いち早く知りたいという視聴者の視点に立ってないのだ。

 

テレビ局の評判を落としたのは、なにも天気予報だけではない。元首相の銃撃死事件以降、もりかけさくら疑惑や統一教会問題を追及する報道はハタと止まった。放送法との関係で、総務省がテレビ局を監督するため、報道内容が政府寄りに傾いたとする批判も一理ある。本来は逆様(さかさま)で、報道機関は政府を監視する立場にあり、忖度することなく、いかに嫌われようとも正論を吐くべきだ。

 

国民は、汗水流して働いて貯めた税金の使途を知る権利がある。統一教会の倍者が当選するようでは、なあなあで済ませてきたと受け取られても仕方あるまい。ましてや、報道機関との親しい関係がすでに暴露されている。「先ず隗より始めよ」というが、襟を正さねばならないのに、真相は依然として闇に葬られたままである。(後半に続く)


【著者プロフィール】
門脇謙(かどわき けん)
高知県南国市生まれ/中央大学附属高校卒、秋田大学医学部卒。
秋田大学第二内科入局にて助手、講師、臨床教授を務めたのち、秋田県成人病医療センター赴任。科長、部長、副センター長、センター長を務め、平成27年〜秋田県立脳血管研究センター循環器内科、社会保険診療報酬支払基金秋田審査委員会事務局 審査調整役に就任。